TAD-D600 導入 レビュー
こんばんは、hayateです。
タイトルの通り、TAD社D600を導入しました。
昨年IYHスレで写真のみUPしましたが、この度正式にレビューを書きます。
■レビューにあたり
今回TAD-D600をレビューするにあたり、導入から時間をおいて記すよう
心がけた。それは、導入直後のファーストインプレッションをネットに
軽々しく載せるより、一定時間通電し、スピーカーから音を出し、耳を慣らし、
何が変わったのかを整理した後に記したいと考えたからだ。
(ファーストインプレッションの場合、そして特に変化が大きい機器の場合、
導入直後は具体的に何が変化したか整理できていない。そして後に印象が
二転三転する事が多い。)
私は、TADの開発者に敬意を表するため、軽薄な文での評価は避けるべき
だと考えた。そして、自らの環境において納得の行く音と正確な評価が可能
になってからレビューを書くことを決した。
TAD D-600は導入から1ヶ月以上経過した。この間、音はやはり変わった。
それは極めて大きく、そして満足へと近づく変化であった。
その変化とTAD-D600の音を一通り整理した今日、レビューを記す。
■導入の狙い
まず何故TAD-D600を導入したかであるが、これには明確な理由が
あった。TAD技術者への賞賛の証として、というのも一つの理由では
あるが、決め手はやはり音であった。
導入前の私のシステムは、幻想的な世界を作り出すAVALONと外界から
輪郭を少しタイトにかたどるGOLDMUNDという性格であった。そして、
それまで使用していたAKURATE DS/dは情報量は多いが音が軽いという
特徴があった。これをトータルすると、ふわっとした世界に輪郭だけがある
音、もっと言うと外堀は作ったが中身の無い音であった。
私はここに中心を貫くような音を入れたいと思った。それは、試聴記にも
あった通り、正確にアタック音を再現してくる点である。
試聴以降、もしTAD-D600を入れたら発生音の中心点を射るような
ズバッとして中身の充実した音が出るだろうか、次第にそう考える
ようになった。
もちろん、素材の違いを見事に彩る音色にも興味があったが、決め手はそ
れであった。
試聴記にも書いたとおり、TAD-D600は固有のキャラを持つ。そして、この
キャラの違いをよくよく考える必要があるとも述べた。その点はよく考えた。
その結果、他社では真似できない正確で全くブレないアタック音を重視し、
TAD-D600を決定した。
しかし、それ以外の点も考慮した。
「飽きる音ではないか。」
私はこれまでの経験上、美音を好んできた。しかも極めて人工的な美音も
良しとしてきた。実直で誠実な音は飽きるケースが多い。さて・・・。
結果、GOLDMUNDのDACを残す事とした。
そして、導入後はソースによって以下のように使い分けている。
1)TAD単体
2)TAD(トラポ)+GOLDMUND(DAC)
違いは後日記載するが、この効果は非常に大きかった。しかし、TADは
"ソースを忠実"に出すため、TAD単体でもソースによっては非常に美しい
音を出すことがわかった。TADは決してつまらない音では無いということを
一ユーザとして断言したい。
さて、導入に際して1つの懸念があった。
それは手持ちのGOLDMUNDはプリメインであり、TAD-D600の音に追従で
きるかどうかであった。その懸念の発端は、プリメインより、セパレートで
プリを奢った方が良い音が出るという一種の定説ではなく、私の経験から発し
たものであった。
以前のメインシステムはAKURATE DS/d、GOLDMUNDのプリメインアンプと
AVALONの組合わせで構築していた。その後、DSをサブシステムへと移行し、
AKURATE DS/dをプレイヤー+プリ、ARCAMをパワーアンプ、ガルネリメメントと
するサブシステムを構築した。この時の音は・・・実はサブシステムの方が
情報量と分解能が数段上であった。(サブシステムでは聞こえる音、微妙な
ニュアンスがメインシステムでは全く出なかった。)
これはすなわち、AKURATE DS/dのプリ機能の方が、GOLDMUNDの
プリメインアンプのプリ部分よりも優れていて、GOLDMUND のプリメインは
AKURATE DS/dが出す音を完全に拾うことが出来ていなかったと考えた。
それ故、TAD-D600を導入しても音の向上は見込めないのでは懸念したのである。
しかし、そのような心配は無用であった。結果は、いとも簡単にAKURATE
DS/dを凌ぐ音を出してきた。今後アンプをセパにした際には、更なる向上に驚くと
推測するが、現構成でもTADの凄みを感じ取れたことは期待以上であった。
本項のまとめとして、導入の狙いに対する結果を述べる。導入目的であっ
た"音の発生点を的確に捉える音"は実現した。それも相当であった。
GOLDMUNDのアンプで感じていた輪郭をかたどる性質は払拭され、この
システムはTAD-D600の音が支配的となった。音質の詳細は以下のレビューで
記するが、TAD-D600を加えたシステムは的確な点音源を有し、その上、
今まで無かった"響き"をよく感じられるシステムへと変化した。
これはAVALON DIAMONDとの相性の良さも貢献しているだろう。
導入結果は想定以上の効果であり、成功と呼べるものであった。
■音質レビュー
(1)一切手を抜かない音
まずこれに尽きる。どんな楽器、打ち込み音の種別を問わず、また低音、
中音、高音の音域、CD、SACDに関わらず強烈なエネルギーを伴って
再生する。どんな小さな音でさえも一音一音しっかりと主張してくる。
TAD-D600が有する凄まじい低音の量感は、他オーナー殿のレビューから
ご存知の方もいらっしゃると思う。私も初め、まるでサブウーファーを追加
したような驚くべき低音を体験した。そして、それはふやけた低音では無く、
先般の試聴記の一定点から放たれたキレのあるサウンドであった。
これだけでも深く感心したが、その後、TAD-D600は中音、高音も同様
の音を出すようになった。これには驚いた。最初はドンシャリ型かとも
考えたが、後に中音が充実してきて、最後にやせ細って神経質な高音が
音色豊で強烈なエネルギーを持つようになった。この変化は特にオーケスト
ラにおいて絶大な効果を発した。
この機器は特定の音だけでなく、徹底して全ての音をエネルギー感溢れる
音として出す。
そのため、今まで味気なかったバックバンドが活き活きとし、ボーカルだけ
に耳がいきがちであった曲が曲全体を楽しめるようになる。(それでいて、
主役と脇役の関係が崩れない点がこの機器の立派な点である。)
また、フルオーケストラでは今まで確認できなかった、非常に小さな音で
演奏する楽器(ティンパニー等)に実在感が与えられ、よりリアルに
聞こえる。
(これらはAKURATE DS/dでは明確には分からない音である。
何か低音が鳴っているとは認識できるが、それが何であるかの閾値に
達してない。TAD-D600の場合音が聞こえるだけではなく、アタック位置と
面の揺れが聞こえてくるので、それがティンパニーであることと、そして
どのティンパニーを叩いているのかさえも分かるのである)
TAD-D600のエネルギッシュな音は、言葉として表現する事が難しい。
キンキンするとか、怒濤のようになだれてくる低音とはまた違う。
全ての音に芯があって、全て活き活きとしている。
だから、聴いていて嫌になるとか、プレッシャーを感じたりする事は無い。
私は圧倒してくるような音は嫌いなのだが(それ故、ブリティッシュで柔らかい
音の機器を選択してきた背景がある)、TAD-D600は変な圧迫感を感じ
させない。
私は、この全ての音に魂を宿すような音は、経験上、この機器を除いて
聞いたことが無い。
この一切手を抜かない音は、ジャズ、クラシック、ポップス全てにおいて、
音質を向上させる。ただ、各種ソースを聴いてきて、この機器で一番恩恵を
受けるのは、クラシックだと感じた。
特に大編成物。ワーグナーやシベリウス、マーラー・・・。
数々の楽器が放つ強烈な響きが大きな渦となり、会場中に轟くような音。
凄まじい音数全てに力を込めて、かつバランスを失わずに集合させてくる。
そして、そのダイナミックな音が右から左に、天地をひっくり返すように部屋
中を駆け巡る。
自宅にいながらここまで凄いオーケストラを聴けたのは驚いた。
むしろオーディオでオーケストラを堪能した記憶はほとんど無い。
あるとすれば、2つ。1つめは、2008年の東京インターナショナル
オーディオショー。AVALON ISISとdcs Scarlatti、Jeff Rowland.
このときの音は圧巻だった。スピーカー後方にステージを描き出し、
等身大の奏者が演奏する。とてもしなやかに、妖艶に。
このシステムと比較すると、TAD-D600は固い。今の私のシステムと
比較すると、表現力という点で、このISISとdcs Scarlattiが上手と感じる。
2つめは、B&W ノーチラスとGOLDMUND EIDOS Reference、
アンプもGOLDMUND(パワーはTELOS2500)。
音色がとても温かで、一つ一つの音をくっきり描く。輪郭が整っているにも
関わらず、妙なエッジは立たない。B&Wとは思えないほど優しい音で、
聞き惚れてしまった記憶がある。
このシステムではマーラーを聴いたが、今のシステムと比較すると、
キャラの違いという差だけで、甲乙付けがたい。どちらともオーケストラを
再生する水準を満たしているため、あとは少しオーディオらしいノーチラス&
ムンドかエネルギッシュな演奏が聴けるAVALON & TAD-D600か・・。
私はオーケストラであれば後者を選択したい。TAD D-600で聴くマーラーや
シベリウスはこちらの方が凄まじい。(前者はJazzやボーカル物を聴きたい)
横道がそれたが、TAD-D600の妥協無い一音一音が曲全体を律し、新たな
表現へと繋がった。この点だけはLINN DSでは無し得ない世界であろう。
(2)情報量
とにかく多い。ソースに含んでいる音を全て出し尽くそうとする。TAD-D600
とAKURATE DS/dとの比較であるが、DSでは太刀打ちできない程である。
その上、TAD-D600は前述の通り、一音一音くっきりと出るため、何が鳴っ
ているのか認識しやすい。そして、音のバランス崩すことなく出てくるのが
特徴である。
上記特徴ゆえ、バランスがおかしな曲をかけるとその通りに出すので、
酷いことになる。また、ソースがあまり情報を含んでいない場合は、
この程度かと少し落胆する。しかし、これは良質なソースを(CDでもSACDでも)
かけた場合は、驚異的な音、それでいて聞きやすい音を出す。
TAD-D600はソースの持つ莫大な情報を徹底的に出し抜くが、逆に誇張
したり間引いたり美化もしない。そのため、この機器はソース(ユーザー)を
選ぶだろう。しかし、私としては、予定していた使用方法 -クラシックの
SACD、CDを鑑賞する- で今までに無い効果を発揮したため、導入して
正解だった。
(3)点音源と精密な配置
導入の狙いであった点音源であるが、これには驚いた。空間に杭を打ち込
んだように然るべき所からピンポイントで音を出す。それも一音一音全て。
その特徴と力強い音が相まって、音楽の正確なリズムを刻む。
バスドラム、ベース、ギターのカッティング、ティンパニー・・・。
TAD-D600が音楽のリズムをあまりにも正確に現わすので、リスナーの
時間感覚が消え去り、場は次第に奏者が演奏するリズムで支配される。
ざっくばらんに言えば、全てを忘れて目の前にある音に没頭してしまう。
精密な音の配置は、フルオーケストラの大編成物に効果を現わす。しかし、
意外な事だったが、打ち込み系の音楽に非常に有用であった。楽器では表
現不可能な世界をこのTAD-D600は顕現させた。
(4)響き
これは予想していなかった。当たり前のことだが、本来響く音は振動する限
り、空間の許す限り響く。響かない音は全く響かない。TADはこれを実現し
ている。ウッドベースのボンッという一瞬の弾く音、そこからの再び弦に
触れて止めるまで細かな振動を繰り返す。そしてきっかりと止まる。
TAD-D600はその一連を極めてクリアに生々しく再生する。
※響きの良さ、クリアさはTAD-D600のS/Nの高さからも来るだろう
AKURATE DS/dと同じ曲をかけても、AKURATE DS/dがうるさく
感じられる曲さえある。TAD-D600は極めてノイズが少ない。
さて、TAD-D600で最も響きの良さを感じたのは、金管楽器であった。
実は今まで、金管楽器を含む演奏を敬遠してきた。聴く場合はGOLDMUND
を経由し、美化させて聴いてきた。それは何故か。オーディオで聴く金管楽
器が嘘っぽいのである。例えば、トランペットというのは本来よく響く。直進
的でありながらふわっと広がり、その響きをさえぎる物は何も無い。しかし、
オーディオでは詰まった様な音で、単色でうるさいと感じていた。それを
ごまかすためにも味付けをして食す必要があった。しかし、味付けをしても
私の知っている金管楽器の音では無いため、敢えて聞くことは無かった。
自身の拘りとして、上手く再生できない、うわべだけの楽器は聴かない。
どうしても違和感を覚える。(AVALONの導入前は、ピアノは聴かなかった。)
TAD-D600で金管を再生するとどうなるか。詰まっていたような音から解放
され部屋中に自由に伸びやかに、そしてそれ自身が持つ美しさをもって
浮遊する。知っている音。安心してその音色の身を委ねることができる。
TAD-D600のお陰で死蔵していたディスクが蘇った。
話は冒頭に戻るが、TAD-D600は響かない物は響かない。そして、点音源
である。これがボーカルに大きく影響した。とにかく口が小さい。一定点から
発声される。そして、意図的に加工をしていない限り、ボーカルの甘さや発
生以外の響きは乗らない。
歌い手が有する以外の幻想的な、美しい声は期待できない。この点は、
好みが大いに別れるだろう。それ故、私はGOLDMUNDのDACを残し、
少し美しい声を楽しめるようにした。
■レビューまとめ・感想
さて、ここまでレビューをご覧に頂いた中には、TAD-D600はエネルギッシュ
で力強くゴリ押しのタイプだと推測された方もいらっしゃるだろう。
しかし少々異なる。確かに、アタック音・震源点はしっかりとしているが、
そこから音が華麗に羽ばたく。実に伸びやかで、音の輪郭などというものに
とらわれること無く。試聴記で触れたように、一音一音まるで異なり楽器本来
の音色が鮮やかに空間に解き放たれる。
従って、ソースによっては安らかにゆったりと聴ける。
実際に使うと、出てくる音はごつごつした見た目とはかなり印象が異なる。
上述したように、音楽のジャンルやボーカルに求めるものよっては、
別メーカーを選択した方が良いケースもあるだろう。
しかしクラシック音楽と、そして打ち込みで構成するアニソンの一部にはとても
素晴しい効果を発揮した。
私は今まで、固すぎて音楽性に乏しい国産機種に辟易してきた。それ故、
全て外国製の機種を導入してきた。しかし、このTAD-D600は本当に良く
出来ていると感心する。徹底してソースに忠実であろうとするが故に、音楽
性を持つソースであればその通りに演奏をしてくれる。CD/SACD問わず。
機器選定に当たってはKLIMAX DSも考慮に入れた。しかし、私としては
SACDを直接再生できる機器を望んでいて、更にDACやトランスポート
としての使い勝手も重視していた。
そして何より、点音源で色彩豊かな表現に魅了されてTAD-D600を導入した。
久々の国産回帰。高い向上心と技術力。
本当にとても良い物に巡り会えた。
そして、やはりこの機器を世に出してくれた技術者にお礼を述べたい。
ありがとうございました。大切に使います。
hayate
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追記:上記レビューに関して2点補足
空間の広さと分離について。
TAD-D600の空間はかなり広い。オーケストラを十分配置するだけの
空間を展開する。ESOTERICのP-01/D-01と比べると、一歩劣る。
しかし、逆に言うとそれに限りなく近い空間描写を実現している。
音の分離であるが、これが超優秀。今まで複数の音に埋もれていた音などは
たやすく分離して、リスナーに提示してくれる。
上記レビューで打ち込みを評価してたが、それはこの優秀な分離にも
起因する。
TAD-D600で打ち込みのある曲を再生すると、打ち込みは単に
本物の代替としてではなく、打ち込みにしかできない世界を表現するために
使用したと確信させるような音を出した。化けたと言っても良い。
DSでは、その片鱗すら見せなかった。
具体的に何の曲がどのように変化したかは、後日、TAD-D600のDAC、
トランスポート性能レビューと併せて記す。
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